世界名作劇場!テンダータウン


HOME > 名作アニメの杜 > 赤毛のアン > 各話一覧 > 第7章

赤毛のアン

Anne of Green Gables

『赤毛のアン』アン・シャーリー illustrated by 夏ミトン
illustrated by 夏ミトン
赤毛のアン(2) [DVD]
巻数
第02巻
DVD品番
BCBA-0091→3608
発売日
1999年03月25日
収録時間
128分
ディスク
片面2層
ファイル
ドルビーデジタル
音声種別
モノラル
字幕
日本語(ON/OFF)
税別定価
¥3,800→¥1,800
メーカー
バンダイビジュアル
HP
詳細ページ ※外部
スタッフ/データ
演出
高畑勲
演出助手
楠葉宏三
脚本
神山征二郎
絵コンテ
奥田誠治
場面設定
宮崎駿
画面構成
宮崎駿
背景
菅原聖二
横山幸博
美術助手
阿部泰三郎
仕上検査
小山明子
制作進行
照井清文
作画
篠原征子
桜井美知代
新川信正
坂井俊一
岡豊
オープロダクション
村田耕一
才田俊次
友永和秀
後藤紀子
本放送日
1979/02/18
視聴率
21.2%
登場人物/キャスト等
あらすじ
第7章

レイチェル夫人恐れをなす

[01:25]Aパート
マリラとアンが食事の後片付けをしています。
「さてと、もう一仕事してくるか」
「近頃バカに精が出ますね、マシュウ」

「ん、そ、そうさのう…いやそれほどのこともないが…」
「いってらっしゃい!」
アンは大きなたらいの中の皿をカチャカチャと洗います。

「マリラ、片づけが済んだら表に行っていい?」
「ああいいよ、30分ぐらいなら」
「うわぁ」

アンは外に出て小走りに色々見て回ります。
アンがグリーン・ゲイブルズに来て2週間がたった。 その間に手違いでマシュウとマリラの所にいついたアンのうわさは、アヴォンリーの人々の間に、波紋のように広がっていた。

レイチェル・リンド夫人がグリーン・ゲイブルズを訪ねてきました。
マリラはお茶を出します。
「それは大変だったねえ」
「ああそうなんだよ」

「日頃病気ひとつしたことの無いあたしが2週間も寝込んだんだからね~ よっぽど悪性の流感だったんだよ」
「ところでマリラ、例のもらい子のことでうわさを聞いたんだけど、本当にもうビックリするような」
「ビックリしてるのはあたしの方だよ」

「もっとも今じゃだいぶ落ち着いたけど」
「災難だったねえ」
「返してしまうわけにはいかなかったのかい?」

「それはできたけど、そうしなかったんだよ、あたしたちが」
「え?」
「マシュウがとても気に入ってしまってね」

「あでもマリラ…」
「いやね、実のところあたしもあの子が好きなんだよ」
「むろん欠点がないわけじゃないけど…」

「家の中がまるで変わってしまったようだよ、ほんとに明るい気立ての子だもんだから」
「ちょっと待って」
「あんたは大変な責任をしょいこんだことになるんだよ」

「そこんとこが分かってないようだね」
マリラは首をすくめます。
「あんたたちは子供のことときたら何の経験もないし…」

「その子の本当の性質だって、ちゃんと分かってるわけじゃないんだろう?」
「ま、あんたの気をくじこうってわけじゃないけど…」
「気なんてくじかれやしません」

「あたしはいったんこうしようと決めたら、それっきり変えないたちなんでね」
「やれやれ、あんたの頑固も相当なもんだね」
「とにかくあの子を呼んできましょう」
「いるの?」

アンは白樺の近くの草原で花を見ていました。
「アン! アン! 戻っておいで!」
「はーい!」
頬を泥で汚したアンは、小走りに戻ってきました。

[04:15]POINT
「なあに?マリラ!」
アンは勢いよくドアを開けて入ってしまいます。
はっ…となり、アンの表情が固まります。
お客様がいるのに気づいて、アンは手を前に組んで行儀よくしようとします。

「なるほどね、器量で拾われたんじゃないことは確かだね」
アンの口がへの字になります。
「ひどくやせっぽちで器量が悪いんだね、マリラ」

「さ、ここに来てあたしによく顔を見せておくれ」
アンはぷるぷると震えだします。
「まあ~それにひどいそばかす、おまけに髪の赤いこと、まるでにんじんだね」

「あ、さあさ、ここへおいで」
アンは目を見開き、怒りで体を震わせながらドアを強く閉めてリンド夫人のほうへ歩み寄りました。
「あんたなんか大っ嫌いだわ」

「大っ嫌い! 大っ嫌い! 大っ嫌いだわ!」
リンド夫人はビックリ、唖然とします。
「よくもあたしのことやせっぽちで器量が悪いなんて言ったわね!」

「よくもそばかすだらけで赤い髪だなんて言ったわね」
「あんたみたいに下品で失礼で心なしの人見たことがないわ!」
「アン!」
アンの言葉と剣幕にマリラも驚きます。

「よくもあたしのことそんなにまで言ったわね!」
「もしもあんたがそんなふうに言われたらどんな気がする?」
「デブデブ太って不格好で、たぶん想像力なんかひとっかけらもないんだろうって言われたらどんな気持ち?」

「これであんたが気を悪くしたって、あたしへっちゃらだわ」
「悪くした方がいいわ!」
「もうせんトマスの酔っぱらっただんなさんがとても憎らしかった時よりももっとひどく、あんたはあたしの気持ちを害したんだもの!」

「だから決してあんたなんか許してやらないから!」
「許すもんか!!」
涙目で叫ぶアン。

「こ…こんな恐ろしいカンシャク持ちは見たことがないよ」
「アン! 自分の部屋へ行ってなさい!」
「あたしが行くまで部屋から出るんじゃないよ!」

「うわぁーあああん!」
アンは泣きながら部屋を出ていき、階段を駆け上がり、自分の部屋まで走っていきました。
「うわああん!」
アンはドアを思いっきりバァンと閉めます。

「はぁ」
アンの剣幕にリンド夫人とマリラは唖然としました。
「あんたもよっぽど物好きだねぇ、あれを育てようっていうんだから」
「ごめん…いや (ここで表情をキリッとさせ) 器量のことであの子にとやかく言うのはよくないよレイチェル」

リンド夫人は意表を突かれてビックリ顔になります。
「マリラ・カスバート、あんたまさかあのカンシャク持ちの肩を持とうって言うわけじゃないだろうね」
「いいえ、もちろんあの子にはよく言って聞かせなくてはならないけど、大目に見てやる必要もあるんじゃないかね」

「今までしつけをされたことがないんだからねぇ」
「あんたはあんまりあの子にひどすぎたと思うよレイチェル」
「そう、分かりましたとも、これからあたしもよくよく気をつけることにしましょう」

「どこの馬の骨だかわからない孤児のご機嫌がそんなに大事なのかねぇ」
「いいえ、あたしは怒っちゃいませんよ、その点は大丈夫、あんまりあんたが気の毒で怒る気にもならないよ」
「これからも、あの子には手を焼くだろうからね」

「10人の子供を育てて、2人を死なせたこのあたしがひとつだけ忠告しておきましょう」
「あの手の子供にはなまぬるいお説教よりも、ビシッというムチの方がよっぽど効き目があるっていうことをね」
「では、おやすみ」

リンド夫人は出口までつかつかと歩き、ドアを開けたところで振り向きます。
「こんなことになってしまったけど、マリラ、時々は家に来てちょうだい」
「もっとも、あたしの方は当分お邪魔に来ないだろうがね…」

「ふっ、何しろあんなに剣突くくったり恥をかかされたのは生まれて初めてだからね」
リンド夫人は帰路につこうとしますが…
「あああっ」
足がもつれて躓きかけてしまいます。

リンド夫人は体勢をたてなおします。
「ふんっ」
リンド夫人は心の中では怒りに満ちていたものの、平静を装ってつかつかと帰っていきました。

リンド夫人が帰っていくのをその場で見送ったマリラは2階へと昇っていき、アンの部屋のドアをノックします。
返事はありませんでしたが、マリラはドアを開けてアンの部屋に入ります。
アンはベッドにうつ伏せになって泣いています。

「アン」
マリラはちょっと近づいて…
「アン!」

アンは少し顔を上げてマリラのほうを見ますが、またうつ伏せてしまいます。
「ベッドから下りなさい、そして私の言うことを聞きなさい」
アンは再度少し顔を上げたあとベッドから下りて、ベッドに座りました。

「見事なお行儀だったねぇ、アン」
「恥ずかしくないのかい?」
「あの人があたしのこと、不器量で赤毛だなんて言う権利はないわ!」

「あんたも、あんなふうにカンシャクを起こしたり、あんなものの言い方をする権利はないんだよ」
「あたしは本当に恥ずかしかったよ」
「リンドさんに器量が悪いと言われたからって、どうしてあんなに怒らなくちゃならないのかねぇ」

「自分でいつもそう言ってるくせに」
「自分で言うのと人からそう言われるのとでは大違いだわ! うぅっ」
「自分では分かってても、他の人たちはそう考えていなければいいと思うものじゃない?」

「あたしどうしようもなかったのよ」
「あの人があんなこと言った時、何かがぐっと込み上げてきて息が詰まりそうになったの」
「黙ってるわけにはいかなかったのよ」

「とにかくいい恥をさらしたもんだよ」
「リンドさんは今日のことをそこらじゅうに言いふらして歩くだろうよ」
「でも… でも、誰かがおばさんに面と向かって、やせっぽちで不器量だと言ったと想像してみて!」

(マリラの回想)
「かわいそうに…」
2人のご婦人がひそひそと話しています。

少女マリラ illustrated by 夏ミトン
illustrated by 夏ミトン

「なんてあの子は色が黒くて器量が悪いんだろう」
「シーッ、マリラが聞いてるよ」

(回想から戻って)
「オホン… 確かに、リンドさんがあんたにあんなこと言っていいとはあたしも思わないよ」
「でもだからと言って、お客様に対してあんな振る舞いをしていいということにはならないんだよ」

「だからアン」
「え?」
「リンドさんの所へ行って、お詫びしてきなさい」

「私が悪かった、許して下さいって」
「それはできないわ、それだけは!」
「どんなにでも好きなようにあたしを罰してくれていいわ」

「ヘビやヒキガエルのいるじめじめした牢屋に押し込んで、パンと水だけにしてもらってもいいの」
「でもリンドさんに謝ることだけはできないわ!」
「じめじめした牢屋なんかここにはないね」

「じゃああんたが自分から進んで謝ると言うまで、この部屋から出ないでいなさい」
「ああぁ、それだったら永久にここにいなくてはならないわ」
「だってちっとも悪かったと思ってないんだもの、リンドさんに悪かったってどうして言えるの?」

「おばさんを困らせたことは悪いと思うけれど、あの人にはああ言ってやってよかったわ!」
「せいせいしたわ!」
「悪いと思いもしないのに、悪いなんて言えっこないでしょ?」

「想像することだって無理よ」
「ふっ、あんたの想像とやらは、朝までにもっとよく働くようになるだろうよ」
「一晩ゆっくり自分のしたこと考えてみなさい」

「あんたは、この家に置いてくれるならいい子になりますと言ったんじゃなかったかねぇ?」
「でもその様子じゃそうとも思えないね」
マリラはちょっと振り返りつつ部屋を出て行きます。

[11:00]Bパート
マリラとマシュウだけの食事となりました。
アンは窓辺に座って、ぼーっと外を眺めています。
「そりゃあアンの方が正しくはないかな」

「あのおせっかいのお喋り婆さんやっつけたのは~いいことだ」
「兄さんにはあきれますね」
「アンが悪いっていうことは分かっているくせにあの子の肩を持つんだから」

「次にはアンを罰することはないって言い出すんでしょ」
「そうさのう…」
「いやそういうわけでもないんだが…」

「少しは罰しなくてはいかんと思うが…」
「そうですとも」
「あの子が自分から謝ると言い出すまでは絶対に出しませんからね」

「うむ…」
マシュウは席を立ってボソッと言います。
「女ってゆうものはみんな強情でいかん…」

「何か言いましたか!?」
「い、いや、何でもないが…」
マシュウは外に出て、外からアンの部屋のほうを見上げます。

その後マシュウは畑仕事を始めますが、アンのことが気になって手が止まってしまいます。
一方アンはベッドの上に膝を抱えて座っています。
そこへマリラが食事を持って部屋に入ってきます。

「いつまで強情を張るつもりか知らないけれど、食事だけはちゃんととるんだよ」
「朝も昼もほとんど食べてなかったじゃないか」
「食欲がないの…」

「まあ好きにするがいいよ」
「でもそんなことで哀れに思ってあんたを許すなんて思ったら大間違いだからね」
「ええ、もちろん許してもらえるなんて考えていないわ」

「今、一生この部屋で過ごす覚悟をしていたところなの」
「ふっ… ん、んま… んん…」
何か言おうと思ってアンのほうに手をのばそうとするマリラですが、飲み込んで部屋を出て行きます。
「はぁ…ふぅ」
アンは小さくため息をつきます。

ぐぅ~、とアンのお腹が鳴ります。
アンはイスに置かれた食事をジーッと見ます。
そしてアンはベッドを下りてイスの前に正座してスープを飲み、パンを食べました。

マリラはバケツを持って家から出てきて、上を見ながら独り言を言います。
「あの子には手を焼くだろうとレイチェルが言ったけど、どうやらそれだけはほんとらしいよ」
「さて、牛を連れ戻しに行かなきゃ」

マリラが出かけたのを見届けたマシュウはこっそり家に戻ります。
マシュウは長靴を脱ぎ、長靴を手に持ってアンの部屋に向かいます。
マシュウはアンの部屋のドアをノックしましたが返事はなく、ドアを開けて部屋に入ります。

[14:50]POINT
アンは窓辺に座って外を眺めています。
「アン…」
「どんな具合だね? アン」

「ああ、マシュウなの、何とかやってるわ」
「いろんなことを空想しているの、時間が早くたつようにね」
「うむ…」

「寂しいけど、早く慣れてしまう方がいいの、先は長いんだもの」
「あ…」
アンはマシュウが長靴を持っているのに気がつきますが、マシュウは長靴を後ろに隠します。

「ところでなあ、アン」
「あれをやって済ましてしまった方がいいと思うんだが…」
「マリラは言い出したらあとへは引かん女だから…」

「リンドさんに謝ること?」
「そう~それだよお詫びだよ」
アンはうつむいてしまいます。

「つまりその… まるくおさめるんだな」
「・・・・・」
「できると思うわ… おじさんのためなら」

「悪かったと言ってもウソにならないの、だって、今じゃ悪かったと思ってるんだもの」
「ゆうべはちっともそうは思わなかったわ、一晩中怒ってたのよ」
「ん?」

「どうしてそれが分かったかっていうと、夜中に3度目が覚めたけど、3度ともかんかんに腹が立ってたんですもの」
「でも、今朝はすっかりおさまってたの」
「もう怒ってなんかいなかったのよ」

「がっかりして、すっかり気が抜けたみたいだったの」
「でもリンドさんの所へ行くつもりにはとてもなれなかったわ」
「とても恥ずかしいことですもの」

「そんなことするくらいなら、いっそここにいつまでも閉じこもっていた方がいいと決心したの」
「でもあたし、おじさんのためなら何でもするわ」
「おじさんが本当にそうさせたいのなら」

「そうさのう…むろんそうしてもらいたいよ、お前が下りてこないと恐ろしく寂しくってなぁ」
「分かったわ、マリラにあたし後悔してるって言うわ」
「それがいい、それがいい」

部屋を出て行こうとするマシュウですが振り向いて…
「あっ、わしがここへ来たことはマリラに話しちゃいけないよ」
「大丈夫よ、絶対秘密は守るわ」

長靴を持って居間に戻ってきたマシュウは、窓の外をマリラが通りかかるのを見かけます。
「はっ、うぅ…」
マシュウはおろおろとした後、ソファーに寝そべって寝たふりをします。

マリラはドアを開けて入ってきました。
「帰っていたんですか? マシュウ」
「ん? ああぁその… たった今な… そうだ! 馬、入れてくるよ」

マシュウはそそくさと出て行きます。
「なに慌ててるんだろう?」
マリラはマシュウが長靴を置きっ放して行ったことに気付きます。

アンは部屋を出て階段の途中まで下りてきました。
マリラは水差しをもって廊下を歩いてきています。
「マリラ」

「ん?」
「何だね?」
「カンシャクを起こしたりして、悪かったと思うの」

「リンドさんの所へ行ってそう言うわ」
「よろしい」
「今からすぐ行くから髪を整えてきなさい」

アンは小さく頷き、無言で階段を上っていきます。
「はぁー」 「ふぅ」
マリラは安心したようにため息をつきました。

2人は家を出て、アンはマリラの後についていくように歩きます。
その様子を見てマシュウは、うん、うん、と頷きます。
マリラの後ろをうつむいたまま歩いていたアンですが、いろいろ考えた末、笑みを浮かべました。

アンは走ってマリラの横まで追いつき、並んで歩きます。
マリラはアンの表情がそれまでと変わったことに気付き、尋ねます。
「何を考えているんだね?」

「あたし、リンドさんに何てお詫びをしようかと想像しているところなの」
「どうも反省したりお詫びの文句を考えている顔には見えないがね」
2人は橋をわたり、やがてリンド夫人の家に到着します。

「あっ」
アンはリンド夫人の膝元にひざまずくと、手を大きく広げ掲げて…
「ああ~おばさん、あたしこの上なく悪うございました」

「あたしがどのくらい悲しんでいるか、とても言い表せません」
「いいえ、たとえ字引を1冊全部使っても言い尽くせやしません」
「それはただ想像して下さるよりほかに仕方がないのです」

「おばさんには恐ろしく失礼をし、あたしが男の子でないのに、グリーン・ゲイブルズに置いて下さるマシュウとマリラには恥をかかせました」
「全く悪い恩知らずの子供です」

「あたしみたいな子は、まじめな人たちから罰せられて、永久に仲間外れにされるのが当たり前なんです!」
「おばさんが本当のことをおっしゃったのを怒ったりして、とても悪うございました」
「おばさんが言ったことはみんな本当でした」

「あたしの髪は赤いし、そばかすだらけで、やせっぽちで、不器量なんです」
(このときだけアンは目を逸らして)「あたしがおばさんに言ったことも本当だけれど」
マリラは驚きや焦りといった表情になります。

「でも言ってはいけないことでした」
「ああ~おばさん、どうぞ、どうぞ許して下さいな」
「もしも許していただけなかったら、あたしは一生悲しみ続けるでしょう」

「たとえ、恐ろしいカンシャク持ちでも、かわいそうなみなしごに生涯の悲しみを負わせようとはなさらないでしょう?」
「ああ、きっとそうはなさらないと分かっています」
「どうかあたしを許すと言って下さいな、おばさん!」

アンは目をつむり、手を胸に組んで返答を待ちます。
「・・・・・・・・・・・」
黙ってアンのことを見つめていたリンド夫人ですが、やがて立ち上がって手を差し伸べます。

「さあさあお立ちなさい、もちろん許してあげますとも」
「あたしも少し言いすぎたけど、気にしないでおくれ」
「いやぁ確かにあんたの髪はずいぶん赤いけど、あたしの知っていた子で、小さい時は赤かったのに大きくなったら素晴らしい金褐色に変わってしまった子がいたわ」

「あんただってそうならないとは言えないじゃないか」
「まあ、おばさん! おばさんはあたしに素晴らしい希望を与えて下さったわ」
「ああ~ 大きくなったら金褐色になれるかもしれないと思っただけで、どんなことでも辛抱できるわ」

「髪が美しい金褐色なら、よい子になるのもずっと楽なような気がするの」
「ああ~おばさん、あなたは私の恩人ですわ!」
「少しぐらいカンシャク持ちでも素直だったらそれでいいんだよ」

「ウソつきやずるい子供よりはどれだけマシか知れやしない」
「ねえマリラ!」
いきなり声をかけられ、マリラは小さく頷きます。

「あんた方がこの子を引き取ったからといって、もうお気の毒様なんて思わないよ」
「あっはははははははははは っはっはっはっはっはっはっ」
マリラと笑顔になったアンは顔を見合わせます。

(挿入歌:涙がこぼれても)
朧がかった満月の下、アンとマリラは帰路につきます。
「あたし、かなり上手に謝ったと思うんだけど」
「お見事でしたよ、全く」

「どうせやるんだったら徹底的にやった方がいいと思ったの」
「ねえマリラ、あたしの髪、本当に金褐色になるかしら?」
「あんまり自分の顔かたちのことばかり考えるんじゃないよアン」

「どうもあんたはかなりの見栄っ張りのようだね」
「あら、自分の器量が悪いと知ってて、どうして見栄っ張りになれる?」
「あたし、きれいなものが好きなだけよ」

「“心うるわしければ見目またうるわし”と言うじゃないか」
「前にもそう言われたことがあるけど、ほんとにそうかしら?」

少し離れて歩いていたアンはマリラに近づき、マリラの腕に寄り添います。
さらにアンはマリラの手をとり手を繋ぎました。
マリラはちょっと驚きつつ、アンを見つめました。

「うちへ帰るって嬉しいものね」
「あれは私の家よね」
「ああ~マリラ、あたし本当に幸せだわ」

アンの細い小さな手が自分の手に触れた時、マリラの胸に何か温かくて快いものが沸き上がってきた。 それは、マリラがこれまで味わったことのない、母のような気持ちであった。

[24:15]予告
日曜日、マリラは教会へ行くことをアンに命じます。
次回『赤毛のアン』第8章 「アン 日曜学校へ行く」お楽しみに。

[24:30]エンディング