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赤毛のアン

Anne of Green Gables

『赤毛のアン』アン・シャーリー illustrated by 夏ミトン
illustrated by 夏ミトン
赤毛のアン(1) [DVD]
巻数
第01巻
DVD品番
BCBA-0090→3607
発売日
1999年03月25日
収録時間
128分
ディスク
片面2層
ファイル
ドルビーデジタル
音声種別
モノラル
字幕
日本語(ON/OFF)
税別定価
¥3,800→¥1,800
メーカー
バンダイビジュアル
HP
詳細ページ ※外部
スタッフ/データ
脚本
高畑勲
絵コンテ
演出助手
楠葉宏三
背景
石橋健一
山本二三
作画
篠原征子
富沢信雄
新川信正
岡豊
村田耕一
才田俊次
友永和秀
本放送日
1979/01/28
視聴率
19.1%
登場人物/キャスト等
あらすじ
第4章

アン・生立ちを語る

(マリラは家の前に馬車をつけていて 勝手口から出てきたアンが乗ると無言で馬車を出す)
(柵のところではマシュウが待っていてマリラに話しかける)
「ジェリー・ブートの奴が今朝やって来たんで、夏の間手伝いに来てくれるように言っといたがな」
「孤児院から手伝いの男の子をもらおうと言い出したのは兄さんなんですよ!」

(マリラは馬車を出し アンは家のほうに振り返って)
「さようならー ボニー」
「さようならー 雪の女王様ー!」
「おじさーん さようならー!」

「さようならー!」
(馬車は小道から街道に出て小さな橋を渡る)
(しばらくの間は黙っていたアンだが・・)

「あたし このドライブを楽しむことに決めたわ」
「楽しもうと決心すれば大抵いつでも楽しくできるものよ」
「せっかくドライブしてるんですもの」

「孤児院に帰ることは考えないでドライブのことだけ考えるわ」
(目を丸くして驚くマリラ)
「あら、早咲きの野バラよ」

「きれいね」
「きっとバラに生まれてよかったって思ってるでしょうね」
「もしバラに口がきけたら素敵ね」

「きっととてもきれいなお話をしてくれると思うわ」
「それにピンクって世界で一番魅力のある色でしょう?」
「あたしピンクが大好きだけど着るわけにはいかないの」

「赤い髪をした者はピンクのものは身につけられないんだもの」
「小さい時髪が赤くて大きくなってから髪の色が変わった女の人 おばさん知ってらっしゃる?」
「いいや知らないね」

「それにあんたの場合 そんなことはおそらく起こらないだろうね」
(表情が曇るアン)
「ああ・・・ これでまた希望がひとつ消えたわ」

「あたしの一生は完全に“うずもれた希望の墓場”だわね」
「これ 本で読んだ言葉なんだけど がっかりするたびに繰り返し言ってみて自分を慰めるのよ」
「それがどうして慰めになるのか あたしには分からないね」

「あら だってとても素敵でロマンチックな言葉でしょう?」
「まるで自分が物語のヒロインになったような気がするんですもの」
(呆れたような表情をするマリラ)

「今日も“きらめきの湖”を渡っていくの?」
「バリーの池は通らないよ」
「それがあんたの言う“きらめきの湖”ならね」

「今日は渚の道を行くんだよ」
「渚の道って素敵ね」
「渚の道っておっしゃったとたん パッとそこの景色が目に浮かんだわ」

「ホワイト・サンドまではどのくらいあるの?」
「5マイルだよ」
「あんた どうやらしゃべるのがよほど好きなようだから どうせなら自分の身の上を話してごらん」

「あら 自分の身の上なんてしゃべる値打ちがないわ」
「自分について想像してることを話した方がずっと面白いっておばさん思うわよ」
「いいや あんたの空想なんかまっぴらだよ」

「ありのままの事実だけを話すんだよ」
「最初から始めなさい」
「生まれはどこで 年はいくつなの?」

「・・・・・」
(アンの口はピタリと止まる)
「どうしたんだね?」

「さあ 話してごらん」
「イヤよ!」
「そんなこと話したってしょうがないんだもの」
(アンの剣幕に驚くマリラ)

「今あたし そんなこと思い出したくないの」
(・・・・・)
(一人の主婦が道の傍らに立っていて マリラは馬車を止める)

「おや この子だね 孤児院から引き取ったっていうのは?」
「でも確か・・レイチェルの話じゃ男の子だって聞いたがね」
「男の子と女の子を間違うなんて しっかり者のレイチェルらしくもないねぇ」

「いやね そうじゃないんだよ」
「実はちょっとした手違いでね 男の子の代わりにこの子が来てしまったんだよ」
「おやまあ~そりゃとんだ災難だったねえ」

「だけどなんでそんなことに」
「それが分からないで弱ってるんだよ」
「これからホワイト・サンドまで行ってスペンサーの奥さんにどういうことなのか聞いてみようと思ってね」

「やれやれ・・まぁ間違いなら孤児院へ送り返すしかないだろうけど この子もかわいそうにねぇ~」
「悪いけど急ぐから・・」
(ここでアンは急に馬車をおりる)

「まあ! どうしたっていうんだね!」
(アンは草原を走って行ってしまう)
「アン! アン! 戻っておいで!」
「アーン!!」

(アンは壊れた柵に座りこんで動かない)
(・・・・・)
「悪かったねぇ つまんないこと口にしちまって」

「じゃ私は急ぐから」
(そそくさと逃げてしまうご婦人)
(マリラは動かず じっと馬車の上で待つ)

(アンもマリラも動かず 馬が道端の草を食べている)
(しばらくしてアンは空を眺めるようになり またしばらくすると馬車のほうに向かって歩き始める)
「ごめんなさい おばさん」

(馬車に乗るアン)
「もう大丈夫 すねたりしないわ」
「私も悪かったよ あんたの気持ちも考えないで」

「あたし おばさんに自分のことを話すわ」
「初めからありのままを全部」
(マリラはアンのことをじっと見つめ 何も言わず馬車を出す)

「あたし ノヴァスコシアのボリンブロークで生まれたの」
「この3月で11才になったわ」
「お父さんの名前はウォルター・シャーリー」

「ボリンブローク高校の先生だったの」
「お母さんはバーサ・シャーリー」
「ウォルターもバーサも美しい名前でしょう?」

「両親の名前が素敵だったので あたしとてもうれしいわ」
「もしお父さんの名前が ええと・・・ペパーミントなんていうんだったら ほんとに恥ずかしいんじゃないかしら?」
「行いがちゃんとしていれば 名前なんかどうだって構わないと私は思うがね」

「そうかしら?」
「いつかバラはほかの名前がついていたとしても やっぱりいい匂いがするだろうって書いてあるのを読んだことがあるけど
 あたしは信じられないわ」

「もしバラがブタ草とかアザミという名前だったら 今みたいに素敵でなくなると思うの」
「お父さんがペパーミントという名前だったとしたら やっぱりあたしがっかりすると思うわ」
「やれやれ 名前のことはそれくらいでいいよ」

「両親の話に戻っておくれ」
(うん と頷くアン)
「お父さんと結婚するまでお母さんも同じ高校の先生をしていたの」

「2人は結婚するとボリンブロークで小さな黄色い家に世帯を構えたんだって」
「あたしその家見たことないけど何千回も想像したわ」
(アンは目をつぶって手を組み 想像しながら話す)

「その家は きっと客間の窓の上にはスイカズラがはってて 前庭にはライラックが・・
 そして門のすぐ内側にはスズランが咲いていたと思うの」
(アンは目を開けて言う)
「そうよ あたし目をつむらなくてもその家がはっきり目に浮かぶわ」

「窓にはモスリンのカーテンがかかってるの」
「だってモスリンのカーテンをつけると とても家が引き立つんだもの」
(おぎゃぁ おぎゃぁ・・)

「あたしその家で生まれたの」
「トマスのおばさんは あたしみたいな無器量な赤ん坊は見たことないって言ってたわ」
「あたしって やせっぽちでちっちゃくて 目ばかりギョロギョロしてたらしいの」

(おぎゃぁ おぎゃぁ・・)
「もっとも あたし 今でもそうだけど・・」
(笑みを浮かべるマリラ)

「でもね お母さんはあたしのこと美しいと思ったんだって」
「お手伝いに来てくれるおばさんより 実の母親の方が正しい判断を下せると思わない?」
「親は子供がかわいいから美しくも見えるだろうよ」

「どっちにしてもお母さんがあたしを気に入ってくれてうれしいわ」
「お母さんをがっかりさせたと思うだけで あたしとても悲しいだろうって気がするの」
「何しろお母さんはそれから間もなく死んじゃったんですもの」

「あたしが生まれて3か月たった時に熱病で亡くなったの」
「あたしが“お母さん”と呼んだことを覚えていられる頃まで生きていてくれたらよかったのにと思うわ」
「“お母さん!”っていうのはとても気持ちのいいことでしょうね」

「あたし お話を読んでいて“お母さん!”っていう所があると その人になったつもりで口に出してみるのよ」
(無邪気な明るい声で)“お母さん!”とか」
(甘えた声で)“お母さま~”とか」
(泣き虫の声で)“ママ~!”とかね」

「でも本当のお母さんに向かっては一度も“お母さん”って呼べなかったと思うの」
「3か月の赤ん坊じゃ無理ですものね」
「お母さんが亡くなってから4日後に お父さんも熱病で死んだの」

「トマスのおばさんの話だと みんな赤ん坊のあたしをどうしたらよいか途方に暮れたらしいの」
(おぎゃぁ おぎゃぁ・・)
「ね その時だってあたしを欲しがる人なんか誰もいなかったのよ」
「あたしはそういう運命にあるんだわ・・・はぁ」

(・・・・・)
アンの話はここでしばらく途切れた
マリラは もう先をうながすこともせず アンの話し始めるのを待っていた


(やがて馬車は海岸が見えるところまでやってくる)
アンは母親への思いから覚め 小さくため息をつくと 海の彼方へ目をやりながら続きを話し始めた
そして それまでと同じように話は時々横道にそれたが つらかった生い立ちを語らねばならないアンにとって
それはどうしても必要な息抜きのようなものであった

「お父さんとお母さんが死んじゃってみんな途方に暮れたのは
 2人の出身地が両方とも遠くて 親戚も誰もいなかったからなの」
「それで結局 手伝いに来てくれていたトマスのおばさんがあたしを引き取ると言ってくれたんだって」

「大変な貧乏で 大酒飲みのだんなさんがいたのに」
「あたしが8つになった時 トマスさん一家はボリンブロークからメルスヴィルに引っ越したの」
「あたしそこでトマスさんの子供たちのお守りをするの手伝ったわ」

引越しトマスさん一家&アン illustrated by ある名作ファン
illustrated by ある名作ファン

「あたしより年下の子が4人いたのよ」
「あたし小さかったから大変だったわ」
「だってトマスのおばさんはやっぱり毎日よその家へ働きに出かけたし おじさんは赤ん坊が泣くとあたしを怒鳴るの」

「それからトマスのおじさんが汽車にひかれて死んだの」
「酔っぱらって線路に落ちたの」
「おばさんがあたしをどうしたらいいか途方に暮れているところへ川上からハモンドのおばさんがやって来たの」

「あたしが子供の扱いに慣れているのを知って ハモンドのおばさん あたしを引き取ると言ってくれたの」
「で あたし川上の切り株だらけの狭い開墾地でおばさんと一緒に暮らしたの」
「とても寂しい所だったわ」

「想像力がなかったらとても住めなかったと思うわ」
「ハモンドのおじさんは その近くで小さな製材所をやっていたの」
「おばさんは8人の子持ちだったわ」

「でもそのうち双子が3組もあったのよ」
(おぎゃぁ おぎゃぁ・・)
「あたし赤ん坊はかなり好きなたちだけど 双子が続けて3組じゃあんまりでしょう?」
「最後の双子が生まれた時 あたしおばさんにはっきりそう言ってやったわ」

「いつもだっこでくたびれちゃうんだもの」
「2年ちょっと川上に住んでいたんだけど おじさんが死んじゃうと おばさん家をたたんじゃったの」
「それから子供たちをあちこちの親類の人たちにやって アメリカに行っちゃったのよ」

「誰もあたしを引き取ってくれなかったので あたし 仕方なしにホープタウンの孤児院に行ったの」
「でも本当は孤児院でも引き取りたくなかったの」
「もう満員だったんですもの」

「そこに半年近くいたら スペンサーの奥さんが来て下さったの・・・はぁ」
(・・・・・)
「学校へ行ったことはあるのかい?」
「ええ」

「でも あんまり行ってないの」
「川上に住んでいた時は学校が遠すぎて 冬は歩いて通えなかったし 夏は休みで学校がなかったの」
「だからあたし 春と秋だけしか行けなかったのよ」

「でもあたし 本を読むのはかなり上手だし 詩もたくさん暗記してるわ」
「それにあたし お父さんとお母さんの形見の本をずっと大事にしてたの」
「それでずいぶんいろんなこと覚えたわ」

「でもその本 孤児院に入る前に 間違えてガラクタと一緒に捨てられちゃったの」
(・・・・・)
「その・・んー その女の人たち・・ トマスやハモンドのおばさんは あんたによくしてくれたのかい?」

「え? ええ・・・」
(言葉につまるアン)
「あら 2人ともそのつもりはあったのよ」

「できるだけ親切によくしてくれるつもりだったんだと思うわ」
「よくしてくれるつもりがあったんだもの
 それが分かってればいつもそうはいかないことがあっても大して気にはならないものでしょう?」

「それでなくても2人とも苦労がたくさんあったんだもの」
「大酒飲みのだんなさんを持つのはとてもつらいことでしょう?」
「続けて3回も双子ができたら大変に違いないだろうって思わない?」
「でも2人とも あたしによくしてくれるつもりがあったことは確かよ」

(・・・・・)
マリラはそれ以上何も聞かなかった
アンは一言も言わず 目の前に広がる海に見とれ
マリラは上の空で栗毛の馬を操りながら 深い物思いに沈んでいた

(馬車は海岸沿いの道をゆっくり進み 平行するように海では帆船が進む)
「海って素晴らしいわね」
「いつかトマスのおじさんが急行馬車を雇って あたしたちみんなを海岸まで連れて行ってくれたことがあるの」
「子供たちの世話はあったけど 一日中ほんとに楽しかったわ」

「それから何年もその楽しい日のことを夢に見たわ」
(カモメが飛んでいるのを見るアン)
「まあ!」

渚の道 illustrated by ねっつん
illustrated by ねっつん

「素晴らしいカモメたちね」
「おばさん カモメになりたくない?」
「あたし なりたいわ」

「日の出に目を覚まして 水の上に舞い降りてくるの」
「そして一日中あの青い海の上を遠くまで飛んでいって 夜になると巣に戻ってくるなんて 素敵だわ」
(大きな建物を目にして表情を変えるアン)

「あの真正面の大きな家は何なの?」
「ホワイト・サンドホテルだよ」
「夏のシーズンになるとアメリカ人が大勢避暑にやって来るんだよ」

「スペンサーさんの家かと思ったわ」
「あそこに着くのはイヤ これで何もかもおしまいになってしまうような気がするんだもの」

(・・・・・)
しかし そんなアンの願いをよそに
馬車はスペンサー夫人の家のあるホワイト・サンドに向かって軽快に走り続けた

(予告)
スペンサー夫人は話の行き違いにただ戸惑うばかり
そんな時アンをもらいたいというお婆さんが現れます
次回『赤毛のアン』第5章
「マリラの決心」お楽しみに ※

※予告時のタイトル
 実際の第5章は「マリラ決心する