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赤毛のアン

Anne of Green Gables

『赤毛のアン』アン・シャーリー illustrated by 夏ミトン
illustrated by 夏ミトン
赤毛のアン(1) [DVD]
巻数
第01巻
DVD品番
BCBA-0090→3607
発売日
1999年03月25日
収録時間
128分
ディスク
片面2層
ファイル
ドルビーデジタル
音声種別
モノラル
字幕
日本語(ON/OFF)
税別定価
¥3,800→¥1,800
メーカー
バンダイビジュアル
HP
詳細ページ ※外部
スタッフ/データ
演出
高畑勲
演出助手
腰繁男
脚本
磯村愛子
高畑勲
場面設定
宮崎駿
画面構成
宮崎駿
背景
スタジオ・アクア
西原繁男
美術助手
阿部泰三郎
仕上検査
小山明子
制作進行
照井清文
作画
篠原征子
富沢信雄
新川信正
オープロダクション
村田耕一
才田俊次
友永和秀
本放送日
1979/01/21
視聴率
20.6%
登場人物/キャスト等
あらすじ
第3章

グリーン・ゲイブルズの朝

[01:25]Aパート
赤い髪の少女アン・シャーリーは、希望に胸をふくらませて本土の孤児院からグリーン・ゲイブルズのマシュウとマリラのもとへやって来た。 しかし、この老いた兄妹が望んでいたのは働き手の男の子であった。 アンはおそらく、孤児院へ送り返されることになるだろう…。

アンがやって来た日の翌日にも朝がやってきて、グリーン・ゲイブルズの一日が動き出します。
マシュウはブタに餌をやり、マリラはニワトリの卵を集めます。
屋根の上ではスズメたちがさえずり始めます。

放し飼いされているニワトリたちは、小屋にある専用の小さな口から出てきます。
ヒヨコを連れているものもいれば何かをついばんでいるものもいて、自由に動きまわっています。
小屋からは4匹の子を連れた太った母猫も出てきました。

アンが寝ている部屋にも柔らかな朝日が射しこみ、井戸の水を汲む音のためか、または牛の鳴く声のためか、ニワトリたちの声のためなのか、アンは目を覚ましました。
天井には桜の木の枝によってできた影がユラユラと動いています。

アンはベッドの上で半身を起こし、その影の主である桜の木に興味を持ち、窓のほうを覗き見しました。
また、辺りを見回し、昨晩脱ぎ散らかしたはずの服や靴がきちんとされているのに気づきます。
再度アンは窓のほうを向き、きれいな花を咲かせた桜の枝が揺れているのを見て、胸の前で手を組み、笑みを浮かべます。

「わぁー」
アンは窓のほうへ駆け寄り、木で出来ていて開けにくい窓を押し上げ、辺りを見渡しました。
「わああぁー」

すぐ近くにある大きな桜の木は満開で、白樺やポプラ、小川、それに架かる小橋…、花に群がる蝶や蜂、小川の近くにはウサギ、カエデの木にはリス、戯れる小鳥たち…、肘をついて窓から外を眺めるアンは、いつしか森の中にいるような感覚になっていて、アンの想像の中では妖精たちが桜の枝を揺り動かしていました。

窓辺のアン illustrated by YUME
illustrated by YUME

そんなアンの肩にそっと手が置かれました。
「はっ」
いつの間にかマリラがやってきていたのでした。

「まだ着物も着てないのかい?」
アンはマリラの方を見ながら立ち上がり、窓の外のほうに手をかざします。
「ああ~何て素晴らしいんでしょう」

アンの目には、庭も小川も森も、この大きな懐かしい世界全体がまばゆいばかりに美しく映り、何もかもが素晴らしいと感じていました。
アンは大きく手を広げて大きな世界を表現しながら歩き、くるりと回ってマリラのほうを向きます。

「こんな朝には、ただもう世界が好きでたまらないっていう気がするでしょう?」
「それに小川の笑ってるのがここまで聞こえてくるわ」
「グリーン・ゲイブルズのそばに小川があるのがあたしとてもうれしいの」

マリラはアンのペースに飲み込まれるのを避けるように窓を拭き始めます。
「おばさんはあたしをここへおいては下さらないんだから、そんなことあたしにはどうでも構わないことだろうって思われるかもしれないけど、そうじゃないんです」

マリラは窓を拭くのをやめ、アンの言うことを聞きます。
「たとえ二度と見られなくてもあたし、ここに小川があることを覚えていたいの」
「もし小川がないと、どうしてもあるはずだと思ってきっといつまでも落ち着かないわ」

アンは、ふふっと笑って窓のほうに身を乗り出して外を見ます。
「あたし今朝は絶望のどん底に落ちてはいないの!」
「朝はそんなところにはいられないわ」

「朝があるってほんとに素晴らしいことね~」
「でもあたし、とっても悲しいわ」
「さっきまで、おばさんが欲しいのはやっぱりあたしで…ここにいつまでもいていいことになったんだと想像してたところなの」

「想像してる間はとっても楽しかったわ」
「でも想像の一番イヤなことは…いつかはやめなくちゃならない時がくることなの…はぁ~ふぅ」
「それがつらいわ」

アンのお喋りがちょっと止んだ沈黙にマリラは、はっと我に返ります。
「さあ、着物を着て下に来なさい」
「あんたの空想なんか、うっちゃってしまうことだよ」
「朝ごはんの支度ができているよ、顔を洗って髪をとかしなさい」
うん、とアン頷きます。

「窓は開けたままにしておいて、布団はベッドの足の方へ折り返しておきなさい」
笑顔になってアンは、うん、と頷きます。
「なるたけ早くやるんだよ」

マリラが部屋を出ていくとアンは寝間着を脱ぎ始めます。
「ああっ」
脱ぎながら歩いたので前が見えず椅子に足を引っ掛けてしまい、カバンの載った椅子を倒しそうになるところを抱えて持ちこたえます。

アンは大きな洗面器に水差しから水を注ぎ込み顔を洗います。
それから昨日着ていた服に袖を通し、髪を下ろして梳かします。
そして鏡の前で髪をいつもの三つ編みにします。

黒い靴下を履こうとしたアンですが履くのを止めて椅子に放り、裸足のまま駆け足で部屋を出て行きます。
しかし布団は乱れたままでした。
アンは裸足で階段を駆け下り、台所に入ります。

[08:20]POINT
マリラはストーブの上のフライパンで何かを焼いています。
「おはよう! おじさん」
「おはよう」

「今朝はとってもおなかがすいたわ」
「ゆうべは世界が寂しい荒野のように思えたけど…今朝はそんなことないわ!」
「お日様が出てるので嬉しいの」

陽の差し込む窓のほうを見るアン。
「でもあたし、雨の朝も大好きよ」
「朝はどんな朝だって面白いわね」

「その日のうちに何が起こるのか分からないので想像の余地がふんだんにあるんだもの」
「でも今朝は雨が降ってなくて嬉しいわ」
「苦しい時に元気を出して頑張るには、お天気の方がやりいいんですもの」

「うんと頑張らなくっちゃと思うわ」
「悲しい本を読んで、その中を自分がけなげに切り抜けていくのを想像するのはいいけど…いざ自分がそういう目にあうとなると、あんまりいいもんじゃないわね」

料理を運んでくるマリラ。
「後生だから黙っておくれ!」
「あんたは小さな子にしちゃまったくしゃべりすぎるよ」

はっとして姿勢を正すアン。
マリラは席について。
「さ、お食べ」

食事の間、アンは黙り続けた。 それがあまりに素直で徹底していたので、マリラはかえってイライラした。 マシュウは、いつもの通り黙りこくっていたので、食事は大変静かなものになった。

食事が終わったマシュウは外に出て行きます。
アンはまだ食べています。
その様子をずっと見ていたマリラですが…。

「もう片付けてもいいかね?」
「えっ? ええ」「お皿はあたしが洗います!」
「おや、ちゃんと洗えるのかい?」

「ええかなり」
「でも子供のお守りをする方がもっと上手なんだけど…お守りをする子がここにいないのが残念だわ」
「これ以上お守りをする子なんか欲しくないね」

「あんただけでも全く手に余るっていうのに…」
「あんたの扱い方すらあたしには見当もつかないよ」
「マシュウも本当におかしな人だ」

「あら、おじさんは立派な人だと思うわ」
「とても思いやりがあるわ」
「あたしがどんなにおしゃべりしても、おじさん嫌がらなかったもの」

「おじさんに会ったとたん、あたしたちウマが合うんじゃないかって思ったの」
「ふっ」
マリラは肩をすくめます。

「ウマが合うってことがそういうことだったら、あんたたち2人ともどうかしてるよ」
「あぁ~お皿洗っといておくれ、今朝あたしは忙しいんだよ」
「お昼すぎにホワイト・サンドのスペンサーの奥さんの所まで行ってこなくちゃならないからね」

「あんたを連れてって、身の振り方を決めることになるだろうね」
マリラはストーブの上のヤカンを前掛けで掴んでシンクにお湯を注ぎ込みます。
アンはその中に皿やカップなどを入れて袖をまくります。

「皿洗いが済んだら2階へ行ってベッドを整えるんだよ」
「はい」
アンは黙って皿を洗います。

「じゃ、頼んだよ」
「ええ、おばさん」
一方マシュウは畑でカブの種を蒔いています。

2階の部屋でアンがベッドを整えるのに苦戦していると、マリラが通りかかります。
「皿洗いは上手だけど、ベッド作りはあんまりうまいとは言えないねぇ」
「だってこんな羽根布団で寝たことないんだもの」

マリラはアンに整え方のお手本を見せてあげます。
やり方を教わりさえすればアンは何でも器用にこなします。
「それが済んだらお昼まで外で遊んできていいよ」
「ほんと?おばさん!」

「戸口を出入りする時ハエを入れちゃいけないよ」
「それから帰ったら足をよく拭いて入るんだよ」
「はい! 気をつけるわ!」

「あっ」
アンは部屋を飛び出し、階段を駆け下りて台所を抜け、勝手口を開けて外を眺めます。
しかしアンは暫く外を眺めると外へは出かけず扉を閉めて、浮かない表情で食卓の椅子にじっと座り込んでしまいました。

[13:25]Bパート
瓶を持ったマリラが2階から降りてくると、じっと座っているアンに気づく。
「おや、今度はどうしたんだね?」
「あたし、外に出る勇気がないの…ふぅ」

「もしここにいられないのなら、グリーン・ゲイブルズを好きになったってしょうがないんだもの」
「外へ行って、あの木や花や小川などと知り合いになれば…あたし好きにならずにはいられないんだもの」

「今でさえつらいのに、この上つらくしたくないの」
「外へ行きたくて仕方がないんだけど、何もかもが “アン、アン、私の所へいらっしゃい” “アン、アン、あたしたちは遊び相手が欲しいのよ” そう呼んでるようなんだけど…」

「でも行かない方がいいの」
「そういうものから引き離されるくらいなら、好きにならない方がいいんですもの」
アンの目には涙がにじんできます。

「あたしここに暮らすことになるんだと思った時、たまらなく嬉しかったの」
「どれほど好きになっても、それを邪魔するものはないと思ったの」
アンはじっとマリラを見ます。

「でも、その短い夢は終わったわ…はぁ~っ」
「今では運命のままに任せるわ」
「外へ行くまいと思うのは、その気持ちがぐらつくといけないからなの」

マリラは何も言わず、瓶を持って部屋を出て行こうとします。
「おばさん」
「あの窓に置いてあるアオイの花は何ていう名前なの?」
「リンゴアオイだよ」

「あらそういうんじゃなくて、おばさんがつけた名前よ」
「名前ないの?」
ないよ、というようにマリラは首をかしげます。

「そんならあたしがつけてもいい?」
「ええと… ボニーはどうかしら?」
「ここにいる間、あの花のことボニーと呼んでもいい?」

再度マリラは首をかしげます。
「やれやれ、そりゃあたしは構わないけど、一体花に名前なんかつけて何になるんだね」
「あら、たとえアオイの花でも、ひとつひとつに手がかりがあった方がいいわ」
「その方がよけい親しい感じがするでしょう?」

「ただアオイと呼ばれるだけだったら、アオイも気を悪くするんじゃないかしら」
「おばさんだって、ただ女とだけしか呼ばれなかったらイヤだと思うの」
「だからあたし、今朝窓から見た桜の木にも名前をつけたのよ」

「“雪の女王”というのにしたわ、真っ白なんですもの」
「もちろん、いつもあんなに花をつけてる訳じゃないけど…いつも咲いていると想像できるでしょ」
ボニーの置いてある窓からアンは外を眺めます。

マリラは何も言わず部屋を出て、瓶とバケツを持って地下室へと降りて行き、独り言を言います。
「あんな子は今まで見たことも聞いたこともないよ」
「マシュウの言う通り確かに面白い子ではあるね」

瓶を棚に置いて、隣の瓶の位置を直します。
「あたしまでが、あの子が次に何を言い出すか待ちかまえる始末だもの」
「あたしにも魔法をかけるつもりなんだろうよ」

バケツにじゃがいもを入れます。
「兄さんはとっくにかかってしまったもの」
「でもマシュウはどうかしてるよ」
「女の子を家に置いて何になるっていうんだね」

(挿入歌:森のとびらをあけて)
アンは外を眺め続けていましたが、やがて元のようにテーブルの椅子に座ってじっとするようになります。
アンはボニーを見たり思いを巡らしたりしますが、一向に動こうとはしません。

マシュウは柵の上に座った若い男と何か話しているようです。
マリラは棚から皿を3枚テーブルに持ってきます。
「今日は早めに昼ごはんにするからね」

マシュウが勝手口から入ってきます。
「午後、馬車を使ってもいいでしょうね?」
うん、と頷きマシュウはアンの方を見ます。

「兄さんは行きそうにもないから、あたしがホワイト・サンドまで行ってこの問題を片づけてきます」
マシュウは力なく頷き目を閉じて考え込みます。
「もちろんあの子も連れてね」

「スペンサーの奥さんがすぐにあの子を孤児院に送り返す手はずを整えてくれるでしょうよ」
「兄さんのお茶の用意はしときますからね」
「牛の乳しぼりには間に合うように帰ってきますよ」

マシュウは、何にも言わなかった。 マリラは口をきいて損をしたような気がした。 口答えをしない男ほどしゃくにさわるものはない、 女ならいざ知らず。

マリラは馬車を用意し、勝手口の前でアンを待っていました。
カバンを持って勝手口から出てきたアンはマリラの隣に座ります。
そしてマリラは無言で馬車を出します。

馬車が出てアンは、離れつつある家を名残惜しそうに見つめます。
柵のところではマシュウが待っていてマリラに話しかけます。
「ジェリー・ブートの奴が今朝やって来たんで、夏の間手伝いに来てくれるように言っといたがな」
マシュウはアンを置いてやりたいと言いたいのだろうが、こう言うのがやっとなのでした。

「孤児院から手伝いの男の子をもらおうと言い出したのは兄さんなんですよ!」
マリラは自分の迷いも断ち切ろうとするがごとく、振り切るように馬車を出します。

アンは家のほうを振り返ってお別れを告げます。
「さようならー、ボニー!」
「さようならー、雪の女王様ー!」

[21:30]POINT
「おじさーん、さようならー!」
「さようならー!」
マシュウは表情を変えて、視界から消えつつある馬車を猛然と追いかけ始めました。
「ああぁ ううぅ ああぁ…はぁ…はぁ」
しかし足がもつれてしまい、見えなくなってしまった馬車のほうを見つめて呆然と立ち尽くすしかありませんでした。

(挿入歌:あしたはどんな日)
マシュウは赤い道の上で馬車が行ってしまったほうをずっと見ていましたが、しばらくして家の方にとぼとぼと歩き始めました。

マシュウの耳には、幸せを願うアンの心の叫びがいつまでもこだましていた。 どうしてはっきりとあの子をグリーン・ゲイブルズに置いてやろうとマリラに言わなかっただろう。 マシュウは自分の臆病さに腹が立って仕方がなかった。

茶とこげ茶の子猫が戯れ、マシュウの前では親猫が寝ています。
その日の午後、マシュウは残りのカブの種をまきに出かけようとしなかった。 そしてただひたすら、マリラが気持ちを変えてアンを連れ帰ってくれることだけを願って、2人が戻るのを待ち続けていた。

一方アンは、馬車が小道から街道に出るや否や、こう言ってマリラを驚かせた。
「あたし、このドライブを楽しむことに決めたわ」
「楽しもうと決心すれば、大抵いつでも楽しくできるものよ」

「せっかくドライブしてるんですもの、孤児院のことは考えないでドライブのことだけ考えるわ」
マリラは目を丸くし、興味をそそられているようです。
やはりマリラも魔法にかかりつつあるのは確かなのでした。

[24:15]予告
スペンサー夫人の家へ向かう途中、アンはつらかった自分の身の上をマリラに話します。
次回『赤毛のアン』第4章 「アン・生立ちを語る」をお楽しみに。

[24:30]エンディング