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赤毛のアン

Anne of Green Gables

『赤毛のアン』アン・シャーリー illustrated by 夏ミトン
illustrated by 夏ミトン
赤毛のアン(1) [DVD]
巻数
第01巻
DVD品番
BCBA-0090→3607
発売日
1999年03月25日
収録時間
128分
ディスク
片面2層
ファイル
ドルビーデジタル
音声種別
モノラル
字幕
日本語(ON/OFF)
税別定価
¥3,800→¥1,800
メーカー
バンダイビジュアル
HP
詳細ページ ※外部
スタッフ/データ
脚本
千葉茂樹
高畑勲
絵コンテ
演出助手
馬場健一
背景
西原繁男
作画
篠原征子
富沢信雄
新川信正
村田耕一
才田俊次
友永和秀
本放送日
1979/01/07
視聴率
19.7%
登場人物/キャスト等
あらすじ
第1章

マシュウ・カスバート驚く

今からおよそ80年ほど前 19世紀も終わりに近づいたある6月のこと
カナダ本土からプリンス・エドワード島へ向かう連絡船の上で
赤い髪をしたひとりの少女が 島での生活を夢みつつ希望に胸をふくらませていた

物語は この島の“グリーン・ゲイブルズ”と呼ばれる家に住む年老いた兄と妹が
孤児院から男の子をもらい受けようと決心したことから始まる

今しも兄のマシュウ・カスバートは身につかぬ晴れ着を着こみ
孤児院から連れてこられるはずの男の子を迎えにブライトリバーの停車場に向かって
のんびりと馬車を進めていた

マシュウは人前に出るのが大の苦手で
特に女性という不思議な生き物はたとえ子供であっても恐ろしかった
60才の今日まで独身を通してきたのも おそらくそのためであろう

一方 マシュウの妹マリラもまた結婚もせず
変わり者の兄を助けて“グリーンゲイブルズ”と呼ばれるこの家を 今日まできりまわしてきたのであった
マリラは今 男の子を迎え入れる準備に忙しい

折しも マシュウの時ならぬ晴れ姿を見かけたレイチェル・リンド夫人は
この地味なお隣に一体何が起ころうとしているのかマリラに問いただそうと
“グリーンゲイブルズ”へと駆けつけた

「何ですって! 孤児院から男の子を?」
「ええ そうなの レイチェル」
(しばし唖然とするリンド夫人)

「でもマリラ 一体何でそんな気になったんだね」
「私には何の話もなかったじゃないか」

「レイチェル 実を言うとこれについちゃずっと考えてきたんだよ」
「去年の暮れ スペンサーの奥さんにお会いしたとき
 春にホープタウンの孤児院から女の子をもらうつもりだって聞いてね」

「でも なにもあんたたちまで・・その年になって・・・」
「それなんだよ レイチェル」
「兄さんももう年だから 前みたいに元気がなくなっちまっただろう?」
「うん・・」

「だから10か11ぐらいの男の子をもらい受けてちゃんとした家庭と教育を与えてやれば
 きっといい働き手になってくれるんじゃないかって考えたんだよ」

「それで今日?」
「ええ スペンサーの奥さんが電報を下すってね」
(ポーン・・と時計が鳴る)
「あら もう汽車の着く時間だ」

「ブライトリバー!」
(駅に汽車が着き アンを連れてスペンサー夫人が降りてくる)
「駅長さん・・」(駅長さんに言付けるスペンサー夫人)
「いいわね 迎えが来るまでここを動くんじゃありませんよ」
「ええ おばさん」
「ああっ」(カバンの口が開いて中身がばらけ落ちてしまう)

(まもなく汽車は発車し スペンサー夫人は汽車の最後尾でアンとお別れする)
「おばさん ありがとう!」
「リリー 元気でね!」
「お行儀に気をつけて 良い子になるんですよ!」
「うん!」

(一方 グリーンゲイブルズでは・・)
「ねえマリラ はっきり言わせてもらえば あんたたちはとんでもないマネをしでかそうとしてるんだよ」
「見も知らぬ子を家へ入れる それも人頼みで」
「そりゃ あたしたちも少しは気がかりだったよ」
「だけどね スペンサーの奥さんは信用のおける人だし・・」
「今度のことについちゃ兄さんがひどく熱心でねえ」

「だけど孤児院の子はいけないよ」
「つい先だってもモリソンの孤児院から来た子がやったって話を聞いたがね・・」
「井戸の中に毒薬を投げ込んだんだよ すんでのところで一家全滅しかけたっていうじゃないか」
「もっとも それは女の子だったらしいけどね」

「ふう・・」
「あら うちは女の子をもらうんじゃないんだよ」
「まさか女の子なんか・・」

(帰っていくリンド夫人はグリーンゲイブルズを振り返り・・)
「はぁ・・まるで夢を見てるようだ」
「それに どう考えてもかわいそうなのはそのみなしごだ」
「マリラとマシュウは子供のことについちゃ何にも知らないんだもの」
「あの二人が子供を育てるなんて・・」

(ブライトリバー駅で迎えを待つアン)
(誰かが来ないかと道を見張りつつ立ち尽くし しばらくするとカバンを抱えつつ座る)
「ふう・・」

駅で待つアン illustrated by はいぱああろあ
illustrated by はいぱああろあ

(時間を持て余し 線路に下りてレールの上を平均台のようにして歩く)
(一方マシュウは懐中時計で時間を気にしつつ馬車をすすめる)
(ふたたび座って待つアン)

(やがてブライトリバー駅に着いたマシュウは
 駅のホームに上がる前に靴についた泥を落とすため階段に靴底をこすり付ける)
(その音を聞いたアンは迎えが来たと思い・・)
「あっ」(と立ち上がる)

(しかしマシュウはちらっとアンを見るが 別の用事があって来たという感じで
 アンとは反対側にあるベンチに座る)

(アンはがっかりするが 元のように座って待つことにする)
(しかしアンはちらちらとマシュウのほうを見るのでマシュウはその視線が気になって目をそらす)
(マシュウはそれをごまかすように懐中時計に目をやる)

(すると懐中時計はいつもと様子が違うようで マシュウは時計を振ってみたり耳を近づけて音を聞いてみたりする)
「ん?」
(懐中時計は止まっていたようだ)

(マシュウは駅舎に入り 駅長さんに・・)
「あの・・5時半の汽車は?」
「カスバートさんかね 遅かったな」
「もう30分も前に行っちゃいましたよ」
「私は あんたが来しだい夕飯に帰ろうと待ってたんだ」

「え? じゃあ あの・・」
「あんたのお客さんのことなら大丈夫 ほら あそこに座ってますよ」
「待合室に入るように言ったんだが 外のほうがいいって大まじめに言うんでね」
「“ここの方が想像をめぐらすゆとりがあるから”なんて・・」
「どうも変わった女の子のようですな」

「え 女の子?」
「いやいや 違うんだ わしが迎えに来たのは その 女の子じゃないんで・・」
「あの その・・ 実はスペンサーの・・」

「その通り! あの子をスペンサー夫人が置いてったんですよ 私に頼んで」
「わからんな~ わしらは男の子を・・」
「ほお~ そりゃ何かの手違いらしいな じゃあ あの子に聞きゃいいでしょう」
「え?」

「いやぁ あんたが欲しい男の子が品切れだったのかもしれんし・・」
「あの子ならきっと説明してくれますよ じゃ 私はこれで」
「ああぁ ちょ ちょっと待って あの・・うぅ」
(駅長さんはそそくさと帰ってしまう)
「・・ふぅ」

(アンは立ち上がりマシュウのほうへと歩いていく)
「グリーン・ゲイブルズのマシュウ・カスバートさんでしょう?」
「う・・うん」
「やっぱりそうでしたのね!」
「よかったわ お目にかかれて」

「ひょっとしたら迎えに来て下さらないんじゃないかって心配になりだしたので
 いらっしゃれないわけをあれこれ考えていたの」

「もし今晩お見えにならなかったら ほら あの大きな桜の木に登って
 あの木の上で夜を明かそうと思っていたのよ」
「ちっとも怖くないわ」

「月の光に照らされて 白い花が一杯咲いている桜の木の上で眠るなんて素敵でしょう?」
「まるで大理石の大広間に住んでるような気がするんじゃないかしら」

「それに 今晩いらっしゃらなくても 明日の朝はきっと迎えに来て下さると思っていたわ」
(マシュウはつい頷いてしまう)

「遅れてごめんよ さ カバンを」
「あら 自分で持てるわ」
「あたしの全財産が入ってるんだけど ちっとも重くないの」

「それに うまく持たないと取っ手が抜けるのよ」
「ほら!」
(取れた取っ手を見せる)
「だからコツを知ってるあたしが持つ方がいいと思うわ」

「こっちでしょう?」
(馬車のほうに向かうアン)
「う うむ・・」

「うわぁ~ おじさんが来て下さって本当によかったわ~」
「そりゃ桜の木の上で眠るのも素敵でしょうけどね」
「でもほんとによかった!」

「長いこと馬車に乗るんでしょう?」
「うれしいわ あたし 馬車に乗るの大好きなんだもの」
「あぁ~ これからおじさんと一緒に住んでおじさんの家の子になるなんて素敵だわ~」
「あたし今までどこの子にもなったことないの ほんとにはね」

「あら あの馬車ね!」
(馬を見てすかさず馬車に乗るアン)

「あたし孤児院はキライ!」
「ひどい所よ」
「だって空想をめぐらすゆとりがないんだもの」
「なにしろ周りはみんな みなしごばかりでしょう」

「そりゃあ隣に座ってる女の子が “本当は立派な伯爵の娘で
 小さい時に両親の所から人でなしの乳母にさらわれ その乳母が罪を白状しないうちに死んでしまった”
 なんて考えるのは面白いわ」

「でも夜だけ」
「昼間はそんな暇がないの」
「だから あたしこんなにやせてるんだと思うわ」

「あたし とってもやせてるでしょう?」
「骨の上にひとかけの肉もないんですもの」
「あたし “自分がぽちゃぽちゃ太ってて ひじにエクボがあったらさぞいいだろう”・・なんて考えちゃうの」

「はぁ」
(馬車を)「出していいかね?」
「ええ お願い!」

「あたし 転げ落ちないように気をつけるわ!」
(微笑むマシュウ)
「ギタップ」(馬車を出すマシュウ)
「はっ!」


少女は まるで軽やかに走る馬車のリズムに合わせるかのように喜々としてしゃべり続けた
そしてマシュウは 自分でも驚いたことに 苦手なはずの女の子のおしゃべりに耳を傾けながら
いつになく愉快な気分になっていた

「ねえ どうしてここの道 みんな赤いの?」
「そうさのう わしにはわからんが・・」
「いいわ! これから発見することが一杯あるなんて素敵だもの」
「もし何もかも知ってたら きっとつまらないわ」
「だって想像することが無くなっちゃうでしょう?」

「でもあたし 少しおしゃべりしすぎるかしら?」
「だまってる方がいい?」
「もしそう言って下されば すぐにおしゃべりをやめるわ」
「決心すればやめられるの 骨は折れるけどね」

(にっこりするマシュウ)
「いや、好きなだけしゃべっていいよ、わしは構わんから」
「まあ うれしい!」
「きっと あたしとおじさん ウマが合うんだわ」

「あたし いつもうるさくってかなわないってみんなに言われるの」
「それにみんな あたしの言葉遣いが大げさだって笑うのよ」
「でも大きな考えを伝えようとすれば 言葉遣いだって大きくなってしまうわよね」
「そうさのう それももっとものようだが」

「スペンサーの奥さんに聞いたんだけど・・
 おじさんのグリーン・ゲイブルズの周りは ぐるっと木で囲まれてるんですって?」
「うれしいわ あたし木が大好きなんだもの」

「孤児院にはひょろひょろした木が2、3本 白い囲いの中にあるきりで・・
 まるで みなしごみたいなの」
「その木を見てあたし よくこう言ったわ・・

 “ああ かわいそうに!
 もしお前たちが他の木と一緒に大きな森で暮らしていて・・
 近くには小川が流れ 小鳥がさえずりに来てくれたら・・
 きっとお前たちも もっともっと大きくなれるのに”って

「今朝 木を置いて来るのがとても心残りだったの」
「グリーン・ゲイブルズのそばに小川ある?」
「スペンサーさんに聞くの忘れたの」
「そうさのう あることはあるがな」

「まあ 素敵!」
「小川のそばに住むのが あたしの夢だったの」
「でも まさかそれがかなうとは思わなかったわ」

「夢が正夢になるなんて」
「今あたし完全に近いくらい幸せよ」
「だけど完全にとはいかないの・・なぜって・・」

(アンは髪を持ち上げて)
「ねえ これ何色だと思う?」
「う・・ん 赤・・じゃないのかね?」
「そう・・赤なの・・」

「ふぅ・・」
「これで なぜあたしが完全に幸せになれないか分かったでしょう?」
「あたし そばかすや やせてることなんか気にしないわ」
「そんなこと想像で忘れてしまえるもの」

「肌はバラ色で 目は美しい星のようなスミレ色だと思い込めるの」
「でも赤い髪はダメ」
「“あたしの髪はつややかな黒だ”
 “カラスのぬれ羽色をしてるんだ”と一生懸命、心の中で思ってみるの」
「でも やっぱり赤い色は消えてくれないので 胸が張り裂けそうになるの」

(大きなため息をつくアン)
「一生ついてまわる悲しみでしょうね・・」
(困惑するマシュウ)

「いつか小説で一生悲しみ続ける女の子のことを読んだけど・・
 赤い髪が原因じゃなかったわ」
「その子の髪は まじり気のない金色で・・・」

「わぁー! カスバートさん」
「カスバートさん!」
「カスバートさぁん!!」

喜びの白い道 illustrated by ある名作ファン
illustrated by ある名作ファン

(白い花が満開に咲いている並木道にさしかかり アンはすっかり見とれてしまう)
(アンには白い花の中に妖精がいるのが見えて すっかりその世界にのみ込まれている)
(並木道を通り過ぎてもアンは名残惜しそうに振り返って見ていた)

(丘を越えて白い花は見えなくなり その後もしばらくの間アンは静かに黙っていた)
(マシュウはアンの様子がそれまでと全然違うことが気になり・・)
「疲れたかね?」
「おなかが減ったろう だが もうじきだよ」

「あぁ カスバートさん さっき通ったあの白い所 何て言うの?」
「そうさのう・・“リンゴ並木”のことを言ってるのかな?」
「あれはちょっときれいな所だが・・」

「きれい?」
「まあ きれいじゃピッタリしないわ」
「美しいでもダメね・・どちらも言い足りないわ ああ 素晴らしかったわ」

(アンは胸をおさえ)
「ここがジーンと痛くなったの・・おじさんは ならなかった?」
「そうさのう わしは別に・・」

「あたしは しょっちゅうよ しんから美しいものを見るとそうなるの」
「でも あんな素晴らしい所を ただのリンゴ並木だなんて・・」

「そうだわ!」
「“喜びの白い道”っていうのはどう?」
「空想的ないい名前でしょう?」
「喜びの白い道・・」

「あたし場所とか人の名前が気に入らないと いつも自分で新しい名前を考えてそう思い込むことにしてるの」
「今度から おじさんも”喜びの白い道”って呼んでね!」
「うむ・・」

「でも ほんとにもうじき着いちゃうの?」
「そうさのう あと1マイルぐらいだな」
「ああ 嬉しいような悲しいような気がするわ」

「だってこのドライブ とっても楽しかったんですもの」
「楽しいことがおしまいになると あたし いつも悲しくなるの」
「その後で もっと楽しいことが待ってるかもしれないけど・・
 それが大抵そうでない時の方が多いのよ あたしの経験ではね」
(マシュウの表情がにわかに曇る)

「だけど家に着くのかと思うと嬉しいわ」
「いよいよ本当の自分の家に行くんだと思うとまたジーンとここが痛くなってくるわ」

マシュウの心もまた ひどく痛んでいた
この赤い髪の少女に何もかもわかってしまう時が 刻一刻と近づいてくるのかと思うと
いてもたってもいられない気がした

少女は そんなマシュウの悩みを知るよしもなく うっとりと燃える夕陽に見とれていた

(予告)
美しく輝く湖を通り過ぎると 馬車はいよいよグリーン・ゲイブルズに着いたのです
次回「マリラ・カスバート驚く」お楽しみに!