庭ではスペンサーさんの娘フローラと、汽車でアンと一緒だったリリーが遊んでいます。
マリラとアンがやって来たのに気づいたスペンサーの奥さんは玄関から出てきました。
マリラは早速、今回の手違いについて話しました。
「あたしどもの欲しかったのは男の子なんですの」
スペンサーの奥さんは…
「まさか そんな… 弟のロバートは娘のナンシーを使いによこして、
あなた方が女の子を欲しがってらっしゃるって…」
マリラは首を振ります。そして
「とにかく、こうなった以上なんとか始末をつけるしかないでしょうね」
「この子を孤児院に返せるでしょうか?」
アンは不安そうにマリラを見ています。
フローラとリリーの明るく楽しそうな声が、アンの心の中とはまさに対照的に響きます。
しかし、スペンサーの奥さんはこう言います。
「返す必要ないと思いますわ」
「昨日ブルエットの奥さんが見えて、手伝いの女の子を頼みたかったと仰ってたんですの」
ちょうどその時、噂をすれば影、ブルエットの奥さんがやってきました。
スペンサーの奥さんはまさに神様の思し召し、とブルエットの奥さんに話しに行きました。
ブルエットの奥さんはアンを見て、ぶっきらぼうに年と名前をアンに尋ねました。
アンは震えながらも、口を閉ざして頑として答えようとしませんでした。
スペンサーの奥さんは、大事なお話だから、と全員を家の中に入れました。
ブルエットの奥さんは「強情さが気に入った」とアンを引き取ってもいいと言います。
でもアンはブルエットの奥さんに引き取られるのはとても嫌な事だと感じています。
不安でたまらなくなって、今にも泣きそうになっています。
スペンサーの奥さんは身内の失敗の始末がつけられる算段がついてほっとしています。
一方ではマリラがまだ何かを考え込んでいて、アンの様子を見てこう言います…
「そうですね どうしたらいいか…」
「別にあたしたちあの子を引き取らないとはっきり決めた訳じゃないんですよ」
涙を浮かべつつあったアンの表情がにわかに明るく、輝きを取り戻します。
マリラは続けます
「実のところマシュウはあの子を置いておく気があるらしいんです」
「で、行き違いの原因がわかった以上
もう一度連れて帰って兄に相談してみませんことには…」
「それであの子をブルエットさんにお願いするようでしたら明日改めてお宅へ連れてまいりますし、
もし伺いませんでしたらあの子はあたしどもの家に置くことになったということに
ご承知願いたいのです」
マリラの言葉を聞いてアンの心はみるみる幸せで一杯になっていくのでした。
グリーン・ゲイブルズに置いてもらえるかもしれない、
とアンの心は嬉しさで溢れかえってしまいそうです。
さっきの言葉が自分の想像したことだったんじゃないかと不安になってしまうくらいでした。
マリラは聞いたとおりだと答えますが、
もしかしたらブルエットさんに引き取ってもらうことになるかもしれない、とも言います。
するとアンは、ブルエットさんのところに行くくらいなら孤児院に帰ったほうがマシだと言います。
「あの人ったらまるで…まるで錐みたい!」
アンのその言葉にマリラは吹き出しそうになりますが、堪えて…
「あんたのような小さな子が目上の、
しかも知らないご夫人のことをそんなふうに言うもんじゃないよ」
仕事が手につかないマシュウは、柵の入り口でマリラが帰ってくるのを待っていました。
“アンを連れて”帰ってくるのを。
「ん?」ついに馬車が帰ってくるのを見つけました。
マシュウは目を凝らします。
・・・「あっ」
マシュウは満面の笑みを浮かべ、ほぉ〜っとため息をつきます。
そして、いそいそと身を隠すのでした。
マリラとアンの乗った馬車はグリーン・ゲイブルズに到着しました。
アンは扉を開け…
「ただいま… なんて言っていいわよね」
「ただいま ボニー」 アンの幸せはまだ半信半疑なのでした。
マシュウとマリラは牛の乳を搾りながらアンをどうするか話します。
家に置くか、ブルエットさんに引き取ってもらうか、二つに一つ。
マシュウの気持ちは既に決まっていたのだから、
連れ帰って来た時点でもう決まっていたも同然です。
マリラはアンが興奮して眠れなくならないようにと、
ここに置くことに決まったことを今夜は話さないことにしました。
アンは食事の間もそのことが気になっているようでしたが、
マシュウもマリラも口を閉ざしたままです。
そのまま食事は終わり、アンは寝かされることになりました。
お祈りをしてから寝るようにマリラは言いますが、アンはお祈りをしたことがないと言います。
マリラに促されてアンはお祈りをしますが、どこか滑稽なのでした。

