「しゃべるのがよほど好きなようだから どうせなら自分の身の上を話してごらん」
と持ちかけます。
しかしアンは自分の身の上なんてしゃべる値打ちがないから、
「自分について想像してることを話したほうがずっと面白いと思うわよ」と提案します。
でもマリラは「まっぴらだよ」と、ありのままの事実だけを話すように言います。
アンは急に口を閉ざしてしまいました。マリラが促しても、
「イヤよ! そんなこと話したってしょうがないんだもの」
「今あたし そんなこと思い出したくないの」と、黙ってしまいました。
そのとき一人のご婦人がマリラに話しかけてきました。
レイチェル・リンド夫人から話を聞いていたこのご婦人とマリラはアンの頭越しに
今回の件の経緯を話しました。悪気はないのでしょうが、アンにとってはたまりません。
話し終えて馬車を出そうかというとき、アンは馬車を下りて走って行ってしまいました。
ちょっと離れたところの壊れた柵に腰掛け、気持ちを落ちつかせようとするアン。
マリラは馬車の上でじっとアンが戻ってくるのを待ちました。
「ごめんなさい おばさん」 戻ってきたアンは、自分のことを話すことにしました。
(アンの話/要約)
| 生まれ | ノヴァスコシアのボリンブロークで生まれました。 |
| 年齢 | この3月で11才になりました。 |
| お母さん | 名前はバーサ・シャーリー。 結婚するまではウォルターと同じ高校の先生でした。 アンを生んでから3か月ほどたったときに熱病で亡くなってしまいました。 |
| お父さん | 名前はウォルター・シャーリー。 ボリンボローク高校の先生でした。 バーサが亡くなって4日後には自身も熱病で亡くなります。 |
| 生まれた家 | アンが生まれたのは、小さな黄色い家。それ以上は想像でしかありません。 <アンの想像上の家> 窓にはモスリンのカーテン。 客間の窓の上にはスイカズラがはってて、 前庭にはライラック、門のすぐ内側にはスズランが咲いている。 |
| トマスさん一家 | トマスのおばさんはアンを見て 「こんな不器量な赤ん坊は見たことない」と言ったといいます。 アンの両親が亡くなり、両親ともに出身地が遠いため親戚が誰もなく 引き取り手がいなくて、手伝いをしていた彼女が引き取ることになります。 大変な貧乏で、大酒飲みの旦那さんがいます。 アンが8つになったとき、一家でメルスヴィルに引っ越します。 アンより下の子が4人いて、アンはお守りをさせられていました。 ある日トマスのおじさんは急行馬車を雇い、一家を海岸まで連れ出しました。 アンはその日の楽しい思い出のことを何年も夢に見ました。 しかし、トマスのおじさんは酔っ払って線路に落ちてしまい、 汽車にひかれて亡くなりました。 |
| ハモンドさん一家 | トマスのおばさんが旦那さんを亡くして途方に暮れているときに、 川上からやってきたのがハモンドのおばさんです。 アンが小さい子の扱いに慣れていることを見込んで、アンを引き取ります。 なんと8人の子持ちで、その内の3組が双子なのでした。 ハモンドのおじさんは小さな製材所やっていて、周りは切り株だらけの開墾地。 想像力がなかったら住めないような寂しいところだったといいます。 このときアンは学校に行ってましたが、学校が遠すぎて冬は歩いて通えず、 夏は休みで学校がなかったため、春と秋だけしか行けなかったのです。 2年ちょっとの間ここに住んでいましたが、ハモンドのおじさんが亡くなると、 おばさんは家をたたんで子供をあちこちの親類にやってアメリカに渡りました。 |
| その後 | ハモンドさんの家を出てからは誰も引き取り手がなく、 仕方なしにホープタウンの孤児院に行きました。 孤児院も満員で本当は引き取りたくなかったようですが、 そこに半年近くいたらスペンサーの奥さんがやって来たという訳なのでした。 |
真正面に大きな建物が見えてきました。ホワイト・サンドホテルです。
アンはスペンサーさんの家かと思って気持ちが沈みました。
スペンサーさんの家に辿り着いたら何もかもおしまいになってしまう。
そんな気がしていたからです。
そんなアンにマリラはかける言葉がありませんでした。

