アンは見たり聴いたりすることがみんな素晴らしいものに感じていました。
「バリーの池」と呼ばれるこの場所も、アンにとっては「きらめきの湖」なのです。
暫くして二人はグリーンゲイブルズに到着します。二人が家に入ると、ちょうどその時
マシュウの妹マリラが廊下側のドアから部屋に入ってきました。しかし最初の一言は
「あら?マシュウ・カスバート それ誰なの? 男の子はどこ?」だったのです。
アンの表情は一瞬にして凍りつきました。マリラはさらに続けます。
「スペンサーの奥さんに男の子を連れて来て下さるようにことづけた」と。
アンは兄妹の話を聞いて感情が一気に臨界まで達してしまいました。
「あたしが要らないのね!あたしが男の子じゃないから要らないのね!」
アンはテーブルに突っ伏して、胸も張り裂けんばかりに泣き始めてしまいました。
マリラとマシュウは途方に暮れ、ストーブ越しに顔を見合わせるばかりでした。
二人ともどうしたらいいのか分かりませんでしたが、やがてマリラがアンをなだめようとします。
マシュウはまだ名前も聞いてなかったので、まずは名前を聞くことにしました。
マリラ 「あんた 名前は何ていうんだい?」
アン 「あたしのことコーデリアと呼んで下さらない?」
マリラ 「コーデリアと呼べだって? それ あんたの名前なのかい?」
アン 「いえ あの… あたしの名前ってわけじゃないんだけど」
マリラ 「一体何のことかさっぱりわからないね」
アン 「アン・シャーリーよ… でもお願いだからコーデリアと呼んでちょうだい」
マリラ 「ロマンチックじゃないだって?バカバカしい」
アン 「あら 恥ずかしがってはいないわ コーデリアの方が好きなだけよ」
マリラ 「つづり方でどんな違いがあるっていうんだね」
アン 「あら 大変な違いだわ」
やがて3人で夕食をとることになりました。
しかし、絶望のどん底にいるというアンは食事が喉を通りません。
それでもアンのおしゃべりは止まることがありませんでした。
その晩アンはグリーンゲイブルズに泊まることになりました。
マリラが部屋を出ていって一人になると、アンは言いようのない寂しさを憶えます。
服を脱ぎ散らかして寝巻きに着替え、布団を頭から被って泣き始めました。
マリラは台所を片付けながらマシュウと話します。
「明日スペンサーの奥さんの所までひとっ走り行ってこなくちゃ」
マリラはアンを孤児院へ送り返すしかないと考えています。
しかし…
マシュウ 「うむ そういうことになるのかな」
マリラ
マシュウ 「そうさのう あの子はなかなかいい子だよ マリラ」
マリラ
マシュウ 「そうさのう いや その…そういうわけのもんじゃないが」
マリラ
マシュウ 「わしたちの方であの子の役に立つかもしれんよ」
マリラ
マシュウ 「そうさのう あの子は実に面白い子だよ」
マリラ
マシュウ 「わしの手伝いはフランス人の男の子を雇えるよ」
マリラ
マシュウ 「そうさのう お前の言う通りだが むろん… ふぅ わしは寝るよ」
マシュウもマリラもそれぞれ寝床につきましたが、二人ともまんじりともしない夜でした。
一方アンは泣き疲れてしまったようで、よく眠っていました。
夢の中アンは白い林檎の花と妖精たちに囲まれ、寂しさを忘れるのでした。

